DJの「準備」と選曲について
こちらの2つの記事を読んで。
Lost Arrangement Systems | セット論
http://www.evangelion.net/~sango/log/eid1833.html
loopdrivelog : DJセットについて
http://loopdrivelog.tumblr.com/post/16467837317/dj
信頼するDJであるところの、Sangoさんとwatさんによるものですが、どちらも大変参考になります。DJどうしで案外こういう話ってしないもので、ましてやイベント中や打ち上げの席など、お酒の入っている状態では話題にも上らないし。
前者のSangoさんは、もともと極めてロジカルにセットを組み上げていく点が特徴であり、魅力だと感じています。洞察力というか、視点が鋭いですよね。内容に共感するのは後者のwatさんのほうで、いつもなんとなく描いているプロセスを簡潔に文章化されていて、なるほど、と思いました。
私も、かっちり展開を思い描いて準備するほうではないので、よく事前に「セットを組む」とはいっても、実際にやるのは、持って行く曲をざっくり選ぶことと、曲と曲の相性を確認することくらいです。相性というのは、デザインでいうと配色理論に近いもので、次の曲を選ぶときに「同一色相で選ぶのか」「隣接色相で選ぶのか」「対照色相で選ぶのか」といったようなものです。
これが、レコードのみの時代はさほど難しいことはなくて、レーベルやアーティスト、国や時代をキーに選んでいけば、わりと自然に混ざってくれるし、そもそも音質やトラック自体のクオリティが、レコ屋の棚に並んでいる時点で(ある程度)担保されていました。でも今は、CDJやPCDJで野良トラックや自作曲を自由に使えるようになり、かえって「決定的に合わない」2曲の組み合わせが、指数関数的に増えてしまった気がします。なので、いざミックスしたらコレジャナイ、というような事態を極力減らすための準備が欠かせないと思っています。
具体的には、曲単体の聴き込み(ブレイク位置や展開の把握)もそうだし、実際にDJミキサーで想定するbpmでミックスしてみて、相性を確かめるというようなことですね。
だいたい、DJって不自由なもので、いつもかけたい曲をかけられるわけじゃないと思うんです。好きな曲であったとしても、流れを無視してかけることは許されないし、上げるか下げるかという判断も、お客さんの反応によりけりだし。大抵の場合、出番が終わったあとに、あれもこれもかけられなかったと消化不良を実感することが多いです。
逆に、不思議と調子のいいときは、曲が勝手に「選ばれてくれる」感じがします。選曲で迷わないうえに、自然にかけたい曲に繋げていける。その前提条件はたぶん、ちゃんと曲が頭に入っていて、かつ用意する音源も多すぎず少なすぎず、それでいてハコやフロアの雰囲気が良くて、自分のコンディションも良いこと、でしょうか。年に1回くらいあります。
結局、事前に綿密に展開をイメージしても、必ずしもお客さんはアタマから終わりまで通して聴いてくれるわけではないですよね。途中でお酒買うかもだし、トイレ行くかもだし、友達と話すかもだし。良いプレイでフロアを離れさせない、っていうのは、結果としてはアリだけれど、それ自体を目的化するのはちょっと違うと感じています。どこから入っても、すんなり波に乗れて、そこそこ起伏を楽しめるくらいがいいのかな。
だからこそ、前のDJの流れを引き継ぐってすごく大事なことだと思います。昔って、最初の1曲は必ず前のDJと同じテイストの曲をかけて、自分の流れを作るのはその後から、ってのが暗黙の了解としてあったと思うんですが、そういうの古いのかな。というか、ざっくり似たようなトピックでググって、DJ入門系サイトで出てくるのが下の文章だから、今もある程度共通言語として生きているとは思うんですが。
The idea is to build from the last DJ, not crash and start again.
How to DJ - Preparing a DJ Set ! | DJ Master Course
こうした選曲論については、おなじみ『クラブDJストーム』の第3話「鋼鉄!機械DJロボ」が示唆的で面白いです。お客さんの体温をリアルタイムに分析して選曲に反映させ、盛り上げまくるロボットDJに対して、ストームがどういう選曲をしたか。これ、それなりに深い話だと思います。
クラブDJストーム 3rd スクラッチ -1-
http://djstorm.blog49.fc2.com/blog-entry-15.html